花火

自宅の駐車場に着いて車を降りると、少し離れた場所からポン、ポンと破裂する音が聞こえる。
どうやら市内の夏祭りで花火を打ち上げているらしい。


「ビッグバン理論」という宇宙論がある。
「宇宙はひとつの爆発から始まり、現在も膨張を続けている」という説だ。
「爆発」って、なんだろう。
もしかしたら我々は、この世界のひとつ上の階層の世界に打ち上げられた花火の爆発によってできる、その世界では一瞬で消えてしまう宇宙の中で、無限の時間を感じて生きているのではないか。
そんなふうにも思う。


市街地の公園で打ち上げられているらしい花火は、広い河川敷や海上で打ち上げられるそれと違って、どうにも迫力が無い。
それでも昼の暑さに消耗した心を、それなりにわくわくさせてくれる。
私はマンションの階段で少しだけ花火を眺め、その中の小さな宇宙を想像してから部屋に入った。