無人島の冒険

1週間ほど更新を空けてしまいましたね。
じつはOuchはちょっと無人島へ行ってきたんですよ。
葉山のマリーナから船で太平洋に向かうこと5時間、その島は浮かんでいました。
「島が浮かんでいる」ってのは普通は比喩的な表現で、実際は海底の隆起が海面上に突き出しているわけで「浮かんでいる」のではないんですが、その無人島は本当に「浮かんでいる」んです。


じつはその海域に「ミナミオオウキシマクラゲ」というクラゲの一種が生息しているんです。
ウキシマクラゲの仲間は満月の大潮のときに海面の一地点に大量に集まり、それぞれの個体がその群れの中心点に向かって押し寄せ、まるで月に吸い寄せられるかのように海面上にまで盛り上がり、ひとつの浮き島を形成するという変わった性質を持っています。
通常はその数日〜数週間の間に産卵が行われ、産卵を終えたウキシマクラゲは死んでしまいます。
その後この島は解体していくのですが、ごくまれに産卵が行われた後もこの浮き島の形態が維持されていくことがあるんです。
このウキシマクラゲが作った浮き島を「コロニー」とよびますが、これは次回ウキシマクラゲが集合するときの中心となります。
つまりどんどんこの島は成長していくわけです。


Ouchが行った無人島もミナミオオウキシマクラゲが作った島で、この時すでに周囲400メートルの大きな島に成長していました。
ミナミオオウキシマクラゲは成体で直径1メートルほどに成長しますから、実に数十億匹ものクラゲによってひとつの島が形成されているわけです。
この規模になるとすでに周囲は貝殻などが堆積し、まるで砂浜のようになっており、さらに内陸部は小高い丘のようになって土で覆われています。


この島はその特殊な成り立ちから、独自の生態系をつくっており、このコロニー特有の植物が生息しています。
代表的、というか島を展望して一番目立つのが「ノイタミドウマヤカンナ」という、ウドに似た植物で、高さ1メートルほどの太くて白い茎の先端に10枚ほどの葉が集中して生えている植物です。
この植物の形といい、島が丘のようになっている点といい、まるで「ムーミン」にでてくる「ニョロニョロ」のようです。
この植物はコロニー上に堆積した土から水分や養分を得るのと同時に、下方に長く根を伸ばし、なんとコロニーを形成するクラゲの死骸からも水分や養分を得ているのです。


Ouchはこの島にテントを張り、3日ほど滞在しましたが、その異様な光景に、まるで別の世界に来てしまったような感覚を覚えました。
ミナミオオウキシマクラゲのコロニーは浮き島だけにその位置を把握することが大変難しく、われわれも今回幸運が重なって発見することができたのですが、みなさんにもぜひ一度この島を御覧になることをお勧めします。